理論と動態
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<下層の人びと>
先住民の労働にみる差異化と全体的底辺化
──ピナトゥボ・アエタと地方労働市場──
吉田 舞
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2012 年 5 巻 p. 94-111

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抄録

 近年、経済のグローバル化と労働市場の再編、労働階層の両極化など、労働の性格・構成・機能の変容をめぐる議論が盛んである。フィリピンにおいても、非正規雇用が増加し、その底辺では、従来の洗濯婦や廃品回収などの労働に加え、ビルの清掃や駐車場係などの新たな職種が増加している。そのようななか、フィリピンの先住民アエタ(Aeta)の人びとの労働も、居住地の移動や平地社会との関わりのなかで、変容してきた。本稿では、先住民の労働の変容について、次の三点から考察する。一つ、職種の多様化である。アエタは、一方で、焼畑や狩猟採集などの伝統的労働の意味を変容させ、他方で、契約雇用、感情労働、出稼ぎ等の新たな労働に携わっている。二つ、アエタは、労働市場のなかで「先住民」の烙印を付与されている。労働が多様化するなかで、アエタは「先住民」として〈差異化〉され、地域労働市場において、平地民の労働者と異なる位置に置かれている。三つ、アエタは、労働の多様化と〈差異化〉により、労働階層の全体的な底辺化を被りつつある。グローバル化により、平地社会(フィリピンの多数者社会)では、階層が分極化しつつあるといわれる。これに対して、アエタは、「先住民」として〈差異化〉され、平地社会の底辺部分に丸ごと押し込まれつつある。本稿では、これらの論点に中心に、先住民がグローバル経済に組み込まれる過程の一端を明らかにする。

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© 2012 特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
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