同時通訳に関わる諸問題についてはさまざまな側面からの研究が行われている。 この論考でははじめにこれまでの主だった研究のうち、1通訳・翻訳の解釈理論、 2情報処理アプローチ、3認知的・語用論的アプローチという 3 つの有力なアプ ローチをやや詳しく批判的に検討し、その問題点を指摘する。そして同時通訳の 有望なモデルとしては Setton (1999) の意図するような解釈理論と情報処理アプ ローチの語用論的総合ではなく、情報処理アプローチと語用論的理論の総合であ るべきことを論じ、最後に今後の通訳研究の方法に触れる。なお、 Sleskovitch/Lederer, Gerver, Moser, Gile のモデルの紹介の記述は、一部水野 (1993b, 1997)と重複することをお断りしておく。