抄録
近年、我が国で病院ボランティア活動は急速に普及したが、全国的な指針・規定の整備が遅れている。このため、各病院においては、安全なボランティア活動支援体制確立の面で困難を抱えている。この問題に対処するため、当院では、病院全体の医療の改善業務を管理する委員会の下にボランティア活動支援のための作業部会を設置し、活動の指導・監督と支援の事務局業務を行う専従職員(ボランティア・コーディネーター)2名を雇用することによって、権限と責任・管理・実務という三段階の体制を構築して、米国のボランティア・ディレクターに代替する機能を実現してきた。また、病院ボランティア活動導入の意義を、<共生>に基づいた関係性から創発される「かけがえのなさ」を感じあうことであるとし、病院ボランティア活動が持つ潜在力として、病院コミュニティの共助機能を活性化する可能性、制度の<暴力>に当事者と共に抗する意志、「参加としての活動」を通じて既存の社会システムの陥穽を指摘し、システムの外に広がる代替選択肢を提示する力、の三点を挙げた。また、これら病院ボランティア活動の潜在力を引き出して、医療の改善と質向上へと結びつけるために、病院ボランティア活動支援業務を医療の改善業務・質管理業務の一環として位置づけたシステム作りの重要性を指摘した。