ボランティア学研究
Online ISSN : 2434-1851
Print ISSN : 1345-9511
内発的発展論における動機付けについての理論的考察
ネパールのケーススタディから
米川 安寿
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 20 巻 p. 43-53

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抄録

 本論は、日本の社会学者である鶴見和子が提唱した内発的発展論における、社会変化を牽引する存在としてのキー・パースンについて考察したものである。特に、キー・パースンの行動の源泉、動機づけについて探求するものである。本稿に先行する研究において、筆者は発展の中心を担うとされるキー・パースン5名を選び、心理学者マズローの欲求階層理論を用いて量的側面から実証分析を行い、キー・パースンの心理面の自己実現性を明らかにした。そして、そのような自己を実現した背景に、キー・パースン自身が目的意識・価値観と出会い、目標を定めて活動した定性的な要因が見いだされた。それは、「価値」や「外部との接触」「自己犠牲的な努力」といった内発的発展論の要件を満たすものであった。そこで本稿は、定性的な側面に注目し、主体性を発揮する動機付けの分析を続行するものである。特に、鶴見が関心を寄せていたアニミズムや宗教性の観点からの考察を加え、この知見をさらに展開したものである。考察の結果、キー・パースンは、直接に宗教的というよりも、マズローが言う課題中心的という意味で広義に宗教的であると考えられ、またアニミズムに依拠している可能性もあり、鶴見が関心を注いだ要素に関連していることが示唆された。

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2020 国際ボランティア学会
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