2022 年 22 巻 p. 17-28
本論では初めにレジリエンスの概念を考察し、それが個人のレジリエンスと社会のレジリエンスの2つの側面があることから、それぞれの内容を検討した。次にこうした多様な内容を持つ概念へどうアプローチすべきかを教育学の分野から論議した。また、ボランティアがかかわることの多い緊急人道支援におけるレジリエンスをめぐる動向をロヒンギャ難民支援とシリア国内被災民支援を例に紹介する。その上で緊急人道支援の分野で「マルチステークホルダー・アプローチ」と「現地化」の二つの大きな流れがあり、それは「レジリエンスパラダイム」シフトとして捉えられていることを示した。最後にレジリエンスの強いと感じた人の例として高橋悠治氏と川嶋辰彦氏の活動と人となりを紹介する。こうした論議によりレジリエンスが個人と社会を包摂する概念であり、個人と社会・自然との関係性の中で生まれるものであり、それはボランティアの持っている新たな関係性の構築という概念と極めて親和性の高いものであることを考察した。