本論は大きく2つの部分から構成されている。第1部ではレジリエンスの概念を明らかにするためにいくつかの側面から検討する。まず、レジリエンスのイメージをレジリエンスが使用される文章を分析した。次にいくつかの分野の識者へのインタビューによって、それぞれの分野におけるレジリエンス概念を調査し、それに対する検討を行った。例えば、都市計画論の専門家は、これまでの都市がコンクリートや鉄を中心としたグレイ・インフラであったが、都市のレジリエンスを高めるためには木を使い、自然と共生するグリーン・インフラが重要になるという。
第2部では、こうした検討を経て、GONGOVAの理念・活動・気付きについて検討した。GONGOVAは1997
年に始まった北タイの山岳少数民族の村における日本とタイの青年による国際ヴォランティア活動である。その目的は、現地研修プログラムに参加した青年にたいして、非日常的な生活・労働環境のもとで、広い視野と深い洞察力を獲得し得る機会を与えることである。
GONGOVAではこうした目的を達成するために試行錯誤を重ねながら活動内容や行動規範を検討してきた。こうした活動の中で、この民族の農耕の基本である焼畑農耕に対する見方が大きく変わった。焼畑は森の資源を収奪的に利用するものと思われたが、実は森を守り、環境を維持するための農耕なのである。ここでは焼畑の地域を循環させて、数年の間隔をあけ、焼畑を行うというやり方で森を持続的に利用し、森の生態系を守っているのである。
GONGOVAに参加した青年は、2-4週間の活動の中で、人間性を高め、異文化への理解を育むことがみられるのである。こうしたことから国際ヴォランティアは村の生活向上と生業への深い理解をもたらし、参加青年のレジリエンスを高めるのである。
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