ボランティア学研究
Online ISSN : 2434-1851
Print ISSN : 1345-9511
スポーツを通じた開発援助における参加型開発の可能性
エチオピアで活動するスポーツ関係者の語りから
加朱 将也
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 22 巻 p. 81-93

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抄録

 開発途上国における様々な課題の解決手段としてスポーツが注目されている。しかし、欧米から生まれた近代スポーツを開発援助の手段として援助者が主体となって用いることで、現地にある独自の文化や価値が失われたり、先進国の価値観や教育手法を現地の人々に一方的に伝えてしまったりするのではないかと手段としてのスポーツの機能を疑問視する声がある。そのため、スポーツを通じた開発援助の現場では、現場の視点を取り入れるための参加型開発の手法が注目されている。しかし、参加型手法を用いて現場の視点を明らかにするだけでなく、その手法を用いる現場の実務者の理解が重要になる。そこで、本研究では、参加型開発の手法を用いる現場の実務者に焦点を当てる。開発援助の現場で活動する実務者の生活やスポーツ経験、スポーツに対する考え方の変化を明らかにし、スポーツを通じた開発援助のあり方について検討する。調査の結果、現地の人々は、近代スポーツを自らの経験を通じて昇華させ、自分たちのスポーツの価値を見出している。そのため、新自由主義的な開発援助のあり方を指摘するよりも、近代スポーツが現地に適合する形に変化していくことを前提に開発援助のあり方について検討する必要がある。参加型開発の手法を用いることで、援助者が様々なアクターを巻き込み、現地の環境に適合したスポーツ活動を実践することが重要であるという結論に至った。

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2022 国際ボランティア学会
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