ボランティア学研究
Online ISSN : 2434-1851
Print ISSN : 1345-9511
大学生のボランティア観の形成プロセスにかかわる一考察
通訳ボランティア活動における利他性と利己性に着目した質的分析
澁谷 由紀
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 22 巻 p. 63-77

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抄録

 本研究は、通訳ボランティア活動に参加経験のある外国語専攻の大学生9名を対象に、ボランティア活動における利他的動機と利己的動機に焦点を当て、ボランティア観が形成されるプロセスを明らかにすることを目的とした。半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析を行った。分析の結果、活動開始時の参加動機、継続意欲、自己成長、活動経験、ボランティア観と取り組み姿勢にかかわる5つのカテゴリーと25の概念が生成された。各カテゴリーと概念間の関係を検討した結果、利己的な動機と親和性の高い通訳ボランティア活動においても「緩やかな利他性を備えたボランティア観」が形成されること、活動を通じた自己成長や自己実現の実感と利他的な意識は並存すること、ボランティア観とマイペースのコミットメントという取り組み姿勢が活動継続の意欲に寄与していることなどが示された。大学生の通訳ボランティア活動を促進するために、社会貢献より学びの機会という意義に重点を置くことが重要である。さらに、通訳ボランティア活動は、グローバル人材育成の機会としても活用の可能性があることが示唆された。

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2022 国際ボランティア学会
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