2009 年 9 巻 p. 83-105
本稿が分析するのは、高いプロ意識を持って世界各国の被災地を支援する大規模人道援助NGOの事業のあり方に違和感を抱く支部の人々の論理である。このようなNGOではプロ意識の強さ故に活動工程を分割し、支部の任務を現場から遠く離れた場所での後方支援活動に限定するケースが存在してきた。その支部の中では、ある種の組織的ジレンマが経験されている。これまで大規模NGOの支部が組織的ジレンマに陥る現象は、支部が草の根活動スタイルにこだわる民主的な主体性を持つからだという理解がなされてきた。しかし本稿では、このようなNGOの場合、分業構造上、現場との直接的関与を断たれることで「現場の切実さ」に接触できないことに起因するジレンマが支部の中で固有に経験されてきたのではないかという見解を示していく。