抄録
本研究では, 輪郭が与えられない場合, または与えられても凹凸が曖味になる場合の, 陰影からの3次元構造知覚について検討する.輪郭からの形状知覚と陰影からの知覚を分離することにより, 陰影だけからの3次元知覚および陰影と輪郭の相互作用を明らかにする.具体的には, Gaussianおよびwhite-noiseを基にして凹凸を付加した対象に, 照明を投射することによって, 輪郭の明示性を制御した刺激を開発した.これを用いた心理物理実験によって, 次のことが示唆された. (1)輪郭が与える凹凸が曖味であっても, 陰影よりも輪郭が3次元知覚に支配的である, (2)輪郭が不可視の場合, 両眼視差によって形状が与えられても, 陰影が支配的となる, (3)濃淡の単調変化だけでなく, 局所コントラストの大域的変化などによっても3次元知覚が生じる.