映像情報メディア学会技術報告
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協調運動検出モデルを用いた多重仮現運動刺激に対する運動検出特性の定量的再現(視聴覚技術および一般)
坂口 忠則松井 利一
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p. 61-66

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抄録

運動方向の異なる2種類の仮現運動正弦波からなる多重仮現運動刺激に対する運動知覚特性と焦点調節応答特性の対応関係の実測結果から,視覚系には直列形マルチチャネル構造が存在することが予測された.本論文では,直列形マルチチャネル構造の存在の正当性を計算論的観点から検証する為に,直列形マルチチャネル構造を有する協調運動検出モデルを用いて実験と同じ多重仮現運動正弦波を解析し,実測結果が理論的に再現可能かどうかが調べられる.その結果,以下の点に於て実験結果と計算結果が一致した.(1)2種類の運動知覚(左右方向運動知覚)から,一方向のみの運動知覚へ切り替わる周波数(臨界空間周波数)が存在する.(2)提示画像の平均時間周波数と1周期あたりの画像構成枚数の増加により臨界空間周波数が高い周波数側ヘシフトする.(3)注目する仮現運動成分に依存して基本的に2種類の異なる焦点調節状態が誘導される.(4)臨界空間周波数以上における第2仮現運動に対する焦点調節誤差が,平均時間周波数と画像構成枚数の減少と供にわずかに増加する.以上の結果は視覚系における直列形マルチチャネル構造の存在の正当性が計算論的観点から裏付けられたことを意味すると同時に協調運動検出モデルが画像観測機構も含んだ視覚系運動検出機構の適切な数理モデルになり得ることをも示唆する.

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© 2002 一般社団法人 映像情報メディア学会
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