近年,ITS(Intelligent Transport System)においてミリ波を用いた車々間通信(IVC:Inter-Vehicle Communication)システムの実用化のための検討が進められている.車々間通信において,車輛が低速または静止しているときの受信電力特性は従来の2波モデルに従うため,受信アンテナを複数用いてダイバーシティ受信をすることにより路面反射波の影響を軽減できたが,車輛が高速に走行する場合の受信電力特性は,2波モデルのような特性ではなく車間距離によらず激しく変動する.その主要な原因であると考えられる路面反射波は直接波とほぼ同じ通路長であるため,遅延時間差が非常に小さい.車々間通信の見通し内伝搬において路面反射波によるフェージングの影響が非常に大きいので,車々間通信システムを実現するためには時々刻々と変化する伝搬環境を把握し,最適な受信方式の検討が必要不可欠である.本稿において,路面反射波に基づくミリ波マルチパス伝搬モデルを提案し,伝搬環境が劣悪な場合におけるアレーアンテナの性能評価を行っている.