抄録
実写なのに模型を写したように見える写真作品がある。こうした作品は、三つの観点で興味深い。ひとつには、大きさ-距離判断という知覚の観点からである。どのような知覚要因が判断の誤りに関与しているのだろうか?二つめには、リアリティ判断の観点からである。私たちは何に基づき、リアルな実体という判断を下すのだろうか?三つめには、こうした作品が注目される社会的背景からである。写真の記録性が技術的には高まる一方、それを否定する写真が楽しまれる背景に何があるのだろうか?ここでは1番目の知覚的観点に焦点をあて、撮影俯角、ぼけ、色彩、線遠近法などの視覚要因を中心に、ミニチュア効果について考える。また、リアリティ判断ならびに社会的背景についても触れることとする。アイステーシスとは広義の「知覚」を意味する古代ギリシャ語で、感覚から感性まで、また、生理学から文化までを含む概念である。模型のように見える実写の作品を通して、「知覚」を多層的に捉えてみたい。