抄録
近年,ユビキタス社会の実現に向けて,移動中の列車内という環境においても高速通信を実現するための整備が進んでいる.一方で,通信速度という点において,現在の列車通信を取り巻く環境は十分とは言えず,ユーザの多様なニーズを満たすには至っていない.地上対列車内での高速通信を実現するために,我々のグループは,移動体追尾技術を用いた光無線列車通信システムの研究を行っている.我々のこれまでのシステムでは,X軸方向とY軸方向で1軸ごとに独立した2枚のミラーを用いてレーザ光とビーコン光の制御を行ってきたのだが,この方式では,制御の複雑性やミラーの発振等の課題が生じていた.そこで,本稿で我々は2軸制御アクチュエータを用いた列車通信システムを提案する.2軸制御アクチュエータは,1枚のミラーでX軸方向とY軸方向の2軸を同時に動作させることが可能であり,処理の簡略化が見込める.さらに,動作の不安定性の除去と反応速度の向上のために,テンション機構の導入とアクチュエータの大きさの変更という改善を加え,その通信性能を実験的に比較検討し,我々の提案の有用性を示す.