写真にノイズを加えると,その写真に対する好ましさが向上する絵柄があることは知られている.ノイズ付加による好ましさの向上の理由として,「記憶質感」というものを提案する.「記憶質感」とは我々が物体を思い浮かべた時にその物が持つ質感のことである.本研究では,ノイズを付加した画像を用いて,人が物体を見たときに実際に感じる質感と,記憶質感との間にどのような違いがあるかを検討した.対象物として自然物と人工物,つるつるした物からざらざらした物まで様々な質感の物体を選び主観評価実験を行った.その結果,いくつかの対象物において記憶質感は実際の質感を打ち消すという傾向が見られた.