抄録
無線LANの利用ニーズの高まりにより,アクセスポイント(AP)の増加と大容量化に向けた伝送帯域の拡大が進んでいる.日本のような住宅が密集した環境では,複数のAPが近接することでセルのオーバーラップが発生し,セル間干渉(Inter-cell Interference:ICI)によるスループット低下が問題となっている.そこで,本稿では,同一周波数チャネルを用いる2つのセルがオーバーラップする環境において,システムスループットを増加させる2つのシナリオについて,有効領域の検討を行った.シナリオ1は,2つAPが自律的に連携し,互いの空間リソース制御によって互いの干渉電力を低減する方式である(双方向セル間干渉制御).シナリオ2は,片方のAPのみが空間リソース制御によって干渉電力低減する方式である(単方向セル間干渉制御).検討の結果,2つのセルの距離が近い時にはシナリオ1の効果が高く,セル間の距離が遠くなるほどシナリオ2の効果が高くなることがわかった.また,送信アンテナ数を増加させた場合,シナリオ1の有効領域が拡大することがわかった.さらに,チャネル推定誤差の影響の検討では,システムスループットがシナリオ1では1.6bit/s/Hz,シナリオ2では0.8bit/s/Hz低下することがわかった.