抄録
情報通信技術の発展に伴い,より自然でリアルなコミュニケーションシステムへの期待が高まっている。それを実現するためには,情報の受け手である人を意識し,臨場感や迫真性など高度感性情報の創出・評価技術を確立していく必要がある。本稿では,まず,バーチャル・リアリティ(VR)や立体映像・立体音響分野で,従来用いられてきた感性情報である臨場感を取り上げ,質問紙調査から得られたデータに基づき,臨場感とは何かについて議論を行う。次に,背景的な「場」の本物らしさに関係すると考えられる臨場感に対して,前景情報を中心とした本物らしさに関連すると考えられる感性印象「迫真性」を取り上げ,両者の相違について実験データを示す。最後に,VRを通じたコミュニケーション場面で問題となる他者の存在感(臨(隣)人感)について,最近行った評価の試みを紹介する。