2018 年 13 巻 2 号 p. 3-11
がん薬物療法による副作用の発現率や重症度の推移は、医療者にとって診療の目安となる。しかし、多くのがん薬物療法では、それらが明確に示されていない。我々は、十分な副作用情報の蓄積により、それらを明確にできると考えた。静岡がんセンターでは、患者から副作用自己評価を紙ベースで得て診療に用いているが、その情報を蓄積し活用できていない現状がある。そこで、我々は、患者の副作用自己評価情報を蓄積し、一元管理するシステムを構築した。本研究では、構築したシステムの臨床応用について検討した。
構築したシステムは、1)患者自己評価用紙の管理・印刷、2)患者自己評価の読み取り・データベース登録、3)結果出力、の3機能を有し、紙ベースの運用継続と副作用自己評価情報の取り込み簡略化のため、記録用紙をマークシートとした。持ち運びを考慮し、A4版両面印刷で1枚に約10種の副作用について1週間分記録できるようデザインした。
構築したシステムの評価は、非小細胞肺がんでシスプラチン+ペメトレキセド療法を行う患者13人の、9種の副作用自己評価情報を用いて行った。結果出力のグラフより、各副作用の発現率や重症度の推移が把握でき、そのグラフは各副作用・コースで特徴を示した。本システムによる情報の十分な蓄積が、副作用の発現率や重症度の推移を明確にし、各コースの推移から、支持療法の効果を評価できることが示唆された。