抄録
日本に広く分布するチガヤは、古くから信仰の場面や屋根ふきの材料などで私たちの生活と深くかかわり親しまれてきたが、南アジア・東アジアでは最強害草とされ、わが国でも植え込みや空き地などに入り込みやっかいな雑草として扱われることも多い。本種の雑草としてのやっかいさの一因は根茎にある。根茎の先は鋭くとがり地上に向かう際はアスファルトをも貫き、多量に生産された根茎は地下に多くの養分を蓄え、芽を含む根茎片は完全なチガヤをつくる能力をもつ。一方種子はほとんどの場合他個体の花粉と受粉するため多様な遺伝的変異を内包している。新しい環境で発芽した個体はそこで自然選択を受け、一つの群落はそこの環境に適応したかなり均質なものになる。結果的にチガヤは、日本列島の変化に富む気象条件や多様なかく乱、幅広い環境条件にも多様な遺伝的変異によって適応し、生態的にも形態的にも分化した様々な特性をもつ群落をつくる。今日では昔からの利用に代わり「緑化植物」としての利用に期待が高まるが、チガヤと上手に付き合うには本種の特性を十分に踏まえることが大切である。