草と緑
Online ISSN : 2424-2551
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1 巻
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  • 伊藤 操子
    2009 年 1 巻 p. 6-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    望ましい“防草緑化”が成されるには,これを構成する「雑草」,「防草技術」,「緑化」の3つの要素をよく理解し,融合させることが重要であることから,まず, それぞれを簡単に解説している.“雑草”は「攪乱依存性植物」といわれるように,人間によって変形された土地に自然に生える植物である.しかし攪乱が頻繁で周期的作物畑と,土地造成という大きな攪乱の後放任されがちな都市・市街地(緑化対象地)では,生態的に異なる種類が発生し,前者では一年草が,後者では地下茎等をもつ多年草が優占する.“防草”といのは一般的な用語ではないが,雑草防除(weed control),雑草の予防(weed protection),雑草の根絶(weed eradication)という異なるコンセプトを含んでおり,これらを組み合わせ長期的に体系だった雑草対策を行うのが,雑草管理(weed management)である.また,“緑化”の“化”とは「形や状況が変わること,変えること」を意味し,したがって,緑化とは施工直後の一時的に美しい状態をさすのではなく,望ましい緑が長期間維持されることであること.そのために必要な雑草への向き合い方は,雑草が,薬剤・資材・機械で抑え込めるものではない賢い生き物だという認識であることが強調されている.
  • 小西 真衣
    2009 年 1 巻 p. 10-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    日本に広く分布するチガヤは、古くから信仰の場面や屋根ふきの材料などで私たちの生活と深くかかわり親しまれてきたが、南アジア・東アジアでは最強害草とされ、わが国でも植え込みや空き地などに入り込みやっかいな雑草として扱われることも多い。本種の雑草としてのやっかいさの一因は根茎にある。根茎の先は鋭くとがり地上に向かう際はアスファルトをも貫き、多量に生産された根茎は地下に多くの養分を蓄え、芽を含む根茎片は完全なチガヤをつくる能力をもつ。一方種子はほとんどの場合他個体の花粉と受粉するため多様な遺伝的変異を内包している。新しい環境で発芽した個体はそこで自然選択を受け、一つの群落はそこの環境に適応したかなり均質なものになる。結果的にチガヤは、日本列島の変化に富む気象条件や多様なかく乱、幅広い環境条件にも多様な遺伝的変異によって適応し、生態的にも形態的にも分化した様々な特性をもつ群落をつくる。今日では昔からの利用に代わり「緑化植物」としての利用に期待が高まるが、チガヤと上手に付き合うには本種の特性を十分に踏まえることが大切である。
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