ここ数十年来の雑草繁茂の増大は,種々のインフラ施設における土地利用の阻害,植栽の劣化,生活環境の悪化,生態系サービスの低下などに大きく影響している.今日の日本では,雑草対策のためのツールは防草シートをはじめ各種のマルチ材,除草機器,除草剤など豊富にそろっているものの,これら技術の機能を十分に生かし統合した科学的思考に基づく雑草管理はほとんどなされていない.防草シートによるマルチは,一度の施用により長期にわたって雑草植生を抑えることのできる手段である.本稿では,雑草管理に関わる人々が防草シートの機能を理解してより適所適材的に活かすこと,および関係者に本資材についての知識があらためて共有されることを目的に,活用場面,要求機能や構造,施用方法とその留意点などについて解説し,雑草害の拡大防止に向けて防草シートをどう活かしていくか,今後の展望について考察した.