草と緑
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公園緑地の雑草発生状況と管理の課題:広域実態調査からみえること
伊藤 操子 伊藤 幹二小西 真衣佐治 健介
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2020 年 12 巻 p. 1-15

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抄録

都市・市街地に存在する個々の公園の緑地は,そのさまざまな機能が公園利用上だけでなく周囲の住環境保全にも重要なものとして,生活者に無くてはならない社会的資産である.しかし,近年は増大する雑草の猛威と非科学的かつ粗放な管理の横行で劣化が進行している.本稿では,まず都市公園の整備実態,公園緑地の機能等について概説し,次いで関東・関西地方を中心に77公園で実施した,雑草の繁茂状況と管理に対する現場調査の結果および調査過程で知り得た関連の事実を紹介した.そして,これを踏まえた公園緑地の雑草管理における課題について考察した.記録された発生雑草種数は333種にわたり多様であったが,広域的に多くの発生が見られた種には植栽の種類による特徴がみられた.公園緑地の主要部分を占める広場芝生(広場施設)と景観芝生(修景施設)では,共通的にスズメナカタビラ,シマスズメノヒエ,メヒシバ,オヒシバ,シロツメクサ,オオバコが主要草種であったが,単立木株元ではこれらの他多年生大型種が,低木植込みでは多年草やつる性雑草が目立った.地域による大きな差異は見られなかったが,整備時期が新しい公園で大型多年草の繁茂が多かった.管理は芝地を中心に年間2~4回の刈取りで行われていたが,調査公園の86%が管理のすべて~一部を外部委託していた.結論として,公園管理責任者の地方公共団体と現場の実施者との乖離という体制的不備と関係者の植物(植栽および雑草)への意識レベルの改善が,雑草を知って管理の適切化を図る以前の課題であることが分かった.

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© 2020 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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