抄録
世界各地に帰化している米国中・北部原産の多年生イネ科雑草メリケンカルカヤは,現在では東北地方にまで分布を広げ,都市・市街地域の空地,道路・鉄道・河川・公園などではもちろん,山間部の耕作放棄地などでも急激に目立つようになった.この高い侵略性を支えている最も顕著な特性は土壌適応幅が非常に広いことで,他種が生育できないやせ地・強酸性土壌(pH3)にも容易に侵入定着できる一方,肥沃地では旺盛に生育する.さらに,枯死した茎葉が長期間(刈らなければ約1年間も)束生のまま残存することも特徴的である.多年生でありながら根系やほふく茎のような貯蔵器官をもたない本種では,枯れ行く茎葉からの養分の還元が,翌春からの新生長の栄養源になっていることが推察される.また,繁殖は風散布体(長毛をつけた花序)によるが,それは風圧での移動に適した巧妙な形状となっている.以上のように,メリケンカルカヤの侵略性を支えている性質は,すでに全国を席巻している大型多年生種とは異なるところが多い.今後,生活圏の環境・社会変化の不確実性が高まるなか,どのような種と属性が侵略性・攻撃性を発揮するのか,柔軟に見守っていく必要を感じた.