抄録
本記事は昨年絶版となった「葛とクズ」(第10巻特集号)からの転載です.葛は万葉集にもよく詠われ,秋の七草として愛でられてきたように,古来里域に普通に生育し,根は葛粉や薬,つるは葛布,葉は食用や飼料として全身余すところなく利用されてきた非常に重要な植物でした.葛粉として代表的な吉野本葛の生産は17世紀初頭に始まったとされ,現在もその地で伝統産業として継続されています.葛粉の生産は冬場に集中する非常に大変な作業です.まず,堀子が葛粉採取に適した塊根を探し出して掘り取る,そして,それを粉砕し厳寒の中で何度も晒して精製するといった過程を経て,極上のでんぷんが得られるのですが,本稿ではその過程が詳細に紹介されています.伝統を継承していくには様々な課題がありますが,著者は葛粉の良さをより多くの人に知ってもらうために,子供たちへの出前授業を年間数多く行うとともに,「葛ソムリエ」の育成に努めています.