草と緑
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ワルナスビ(Solanum carolinense L.)
伊藤 操子
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2012 年 4 巻 p. 35-43

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抄録

ワルナスビは分布の温度域が広く,北海道から沖縄本島まで分布し,牧草地から飼料畑,非農耕地の随所に発生している.輸入乾草・飼料として畜産地帯(牧草地・飼料畑)に侵入し,種子が堆肥.牛糞に混入して苗木・作物生産地に拡散し,さらに緑化樹の植栽・客土等の土の移動により都市域にも広がった.地下部に長大な横走根と垂直根からなる根系(creeping root system)を発達させ,刈取り後の再生や春季のシュート発生は,ここに形成される不定芽による.繁殖体は種子と根の断片である.種子には休眠性があるが,根断片は通年,不定芽形成・萌芽力をもっている.本草の雑草害は①茎葉の鋭い棘による傷害,②ツツジ等有用植物の強い生育阻害,③ナス科特有の有毒物質ソラニンが家畜に有毒なこと,④同じナス科作物の病気(トマトモザイクウイルス等)や害虫の中間宿主になることなど多様である.防除は困難だが,化学的手段が最も効果的で茎葉処理ならホルモン系の剤が土壌処理ならクロロプロファムが有効と考えられる.米国では,繁茂地からの拡散防止,輸送防止,有用種子への混入防止および防除法の指針が多くの州および国レベルで出されているが,日本にはこれに該当するものはない.

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© 2012 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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