草と緑
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ヨモギ(Artemisia princeps Palm.): 雑草としてのその素顔
伊藤 操子
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2015 年 7 巻 p. 30-37

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抄録
日本人にとって人里の草本として親しまれ利用されてきた「ヨモギ」の中身が,近年の社会の変化に対応して如何に変貌してきたか,ならびに今日の都市・市街地雑草としての旺盛な繁茂を支えている植物的特性である地下部の発達と機能を中心に解説している.ヨモギは古来,様々な効能をもつ民間薬,虫よけ,ほくち,もぐさ,また食用として利用されてきた.ヨモギが都市域で猛威を奮うようになったのは,このような利用がなくなったこともあるが,列島改造時代の土壌の大規模攪乱と客土もための土壌移動で大量の繁殖体の侵入・拡散があったこと,法面緑化用にヨモギの種子が大半国外産で遺伝的に多様化したことが考えられる.また,年間2回程度の刈取りはシュートの増加を促すにも関わらず,鉄道,道路,河川敷,空き地等がほとんどこの方法で管理されていることも,本草の増加につながったとみられる.一方,地下部の発達と機能をみると,根茎は親シュートの周りに放射状に形成され,その後秋季に二次,三次根茎は分枝し,それぞれの先端が上向き出芽したシュートを中心に同じことが毎年繰り返され広範囲に根茎系を広げる.伝播・繁殖は根茎断片と種子による.ヨモギの水分吸収力は非常に大で,夏季の水分競合が街路樹や植込みの枯れの原因となる.
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© 2015 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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