草と緑
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雑草リスク情報-その1:雑草による傷害
伊藤 幹二
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2017 年 9 巻 p. 27-36

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抄録

近年,雑草に起因する様々な社会・環境・経済的問題が頻発しています.そこでNPO法人緑地雑草科学研究所が中心になって,市民科学集団“雑草ウオッチャー”を立上げ,様々な問題を市民の目でウオッチしています.今回の報告は,生活圏において人々を傷つける雑草,いわゆる「傷害雑草」についてです.55件の報告内容は,傷害雑草・雑木は27種類,このうちトゲ(あるいは鉤毛)をもつ種は23種で,とくに多かったのは,ワルナスビの7件、アメリカオニアザミ,ノイバラの5件、メリケントキンソウの4件でした.全体として,分類群ではキク科,ナス科,バラ科,タデ科,ウリ科,ユリ科,ヒユ科,マメ科,イラクサ科,グミ科に,生活史では一年生草本,多年生草本,木本と多岐にわたっていましたが.挙げられたトゲ雑草の大半が近年分布を広げている外来種であることは注目すべき点です.傷害雑草の部位としては,茎が最も多く,果実,茎葉,葉,葉腋の順で,葉・茎・花・果実すべてが傷害部位であるのはアメリカオニアザミ1種でした.トゲ以外に負傷の原因になる部分は,鋭い葉縁,長く横走する蔓,硬い切断部,衣服付着果実,刈取り時の粉末(揮発性物質の吸引が原因か)が挙げられました.最もトゲの危険性(ケガの大きさ・痛さの程度)の高い種類は,アメリカオニアザミ,ニセアカシヤ,サルトリイバラ,ノイバラかと思われます.

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© 2017 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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