抄録
症例は62歳,男性.慢性腎不全のため両側腎に対して生体腎移植後であり,メチルプレドニゾロン,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチルを投与中であった.2017年10月2日から吸気時の右胸痛を自覚したため近医を受診したが,肋間神経痛として帰宅していた.10月12日に胸痛の増悪を認めたため当院へ救急搬送となった.胸部CTで右胸膜に接して肺膿瘍を認め,喀痰培養および血液培養からKinyoun染色陽性のグラム陽性桿菌を認めた.治療開始数日で呼吸不全の悪化を認め,一時的に人工呼吸器管理を要した.後日培養結果でNocardia farcinicaと判明したため治療を継続し,改善を認めた.第44病日に頭部MRIで多発脳膿瘍を認め,播種性ノカルジア症による脳膿瘍として治療を追加した.免疫能の低下を認める患者における呼吸器感染症としてノカルジア症は鑑別に挙げるべき疾患と考える.