2020 年 72 巻 4 号 p. 157-170
災害と子どもの問題行動が短期・中期において関連することが認められているが,長期においての指摘はなされていない.そこで東日本大震災後,長期経過における子どもの問題行動に関連する要因について検討した.震災時岩手県内に在住していた子ども64名とその親51名を対象に2012~2013年(T1)と2017~2018年(T2)に調査を実施し,子ども行動チェックリスト(CBCL)と被災体験,家族背景,保護者の心身の健康状態,ソーシャル・キャピタルについて調べた.被災体験は曝露群(沿岸在住)の方が多く,CBCL得点はT1と曝露群の方が有意に高かった.保護者の心身の健康状態,震災前の親子のストレス体験,震災時の居住地がT2の問題行動に影響することが明らかになった.以上より,長期経過により子どもの問題行動は収束し,問題行動には親子の震災前のストレス体験や震災後の保護者の健康状態が影響することが示唆され,被災地の親子に対しては継続的な支援が必要と言えた.