岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
72 巻, 4 号
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Original
  • 安部 悠一郎, 村上 秀樹, 遠藤 寛興, 山部 大輔, 千葉 佑介, 金野 大地, 千田  廉, 土井田 稔
    2020 年 72 巻 4 号 p. 133-144
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    ジャーナル オープンアクセス
    簡便な方法により,腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis, LSS)患者の間欠性跛行を検出及び定量化できれば,診断の一助や治療後評価判定の良い指標になる.本研究の目的は加速度センサを用いて,健常者とLSS患者の歩行解析を比較しLSS患者の歩行特徴量を明らかにすることである.LSS患者16名と健常者10名に対し加速度センサを用いて6分間歩行試験を施行し,歩行中の加速度データを測定した.測定した加速度データから前後方向の平均加速度量(Averaged acceleration value of antero-posterior direction, AA)と左右対称性の指標であるLissajous Index (LI)を経時的に健常者とLSS患者を比較した.健常者では歩行継続に伴い左右対称性に経時的変化を認めなかったが,LSS患者では徐々に左右対称性が崩れていった.前後動においても健常者では歩行継続に伴う経時的な変化は認めなかったが,LSS患者では歩行時間が増すごとに後方の加速度が増加した.これらの結果から,LIとAAの経時的変化は,LSS患者の間欠性跛行を捉える指標となりうる事が示唆された.
  • 松浦 佑樹, 田中 文隆, 瀬川 利恵, 丹野 高三, 坂田 清美, 大澤 正樹, 大間々 真一, 小笠原 邦昭, 旭  浩一, 中村 元行
    2020 年 72 巻 4 号 p. 145-155
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    ジャーナル オープンアクセス
    血清尿酸値が心血管疾患発症の独立した危険因子であるかについては議論が分かれている.また血清尿酸値は慢性腎臓病があると二次的に上昇するため,血清尿酸値自体の評価を行うためには慢性腎臓病を除外する必要がある.そこで本研究は慢性腎臓病を除外した一般住民15,036人(男性5038人,女性9998人)において,血清尿酸値4分位と心血管疾患発症の関連,性差について解析した.平均追跡期間は8.8年で,男性で304件(脳卒中 248件,心筋梗塞/突然死 59件),女性で307件(脳卒中 280件,心筋梗塞/突然死 30件)の心血管疾患が認められた.確立された心血管リスクで調整してハザード比を解析したところ,男性では血清尿酸値と心血管疾患発症との間に明らかな関連はなかったが,女性ではベースラインの血清尿酸値が高いほど心血管疾患発症のハザード比が高かった.血清尿酸値は女性でのみ心血管疾患発症の独立した危険因子と考えられた.
  • 岩手県内における追跡調査
    小野 舟瑛, 八木 淳子, 福本 健太郎, 吉岡 靖史, 大塚 耕太郎
    2020 年 72 巻 4 号 p. 157-170
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    ジャーナル オープンアクセス
    災害と子どもの問題行動が短期・中期において関連することが認められているが,長期においての指摘はなされていない.そこで東日本大震災後,長期経過における子どもの問題行動に関連する要因について検討した.震災時岩手県内に在住していた子ども64名とその親51名を対象に2012~2013年(T1)と2017~2018年(T2)に調査を実施し,子ども行動チェックリスト(CBCL)と被災体験,家族背景,保護者の心身の健康状態,ソーシャル・キャピタルについて調べた.被災体験は曝露群(沿岸在住)の方が多く,CBCL得点はT1と曝露群の方が有意に高かった.保護者の心身の健康状態,震災前の親子のストレス体験,震災時の居住地がT2の問題行動に影響することが明らかになった.以上より,長期経過により子どもの問題行動は収束し,問題行動には親子の震災前のストレス体験や震災後の保護者の健康状態が影響することが示唆され,被災地の親子に対しては継続的な支援が必要と言えた.
Case Report
  • 尾上 洋樹, 竹下 亮輔, 江渡  恒, 永沢 崇幸, 佐藤 誠也, 松浦 朋彦, 佐藤  慧, 馬場  長
    2020 年 72 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    ジャーナル フリー
    術前処置で行われたグリセリン浣腸により溶血尿と肛門部皮膚潰瘍を生じた1例を経験した.症例は34歳の女性.卵巣嚢腫に対し腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術を予定した.術前処置として手術当日の朝に120 mlのグリセリン浣腸を施行した.1時間後,肛門の痛みと腫脹を認めた.全身麻酔導入後に尿道バルーンカテーテルを挿入すると血色素尿の流出を認めた.術中に膀胱鏡と肛門鏡を施行したが、穿孔を疑う粘膜の損傷は認めなかった.術後の血液検査でビリルビンの上昇,CTで肛門周囲の脂肪織の濃度上昇を認め,グリセリンの腸管外漏出による溶血と診断した.速やかに補液と利尿薬による治療を行ったところ腎不全に進行する事なく溶血は改善した.受傷3日後に肛門部皮膚潰瘍が生じたが,1ヵ月で治癒した.グリセリン浣腸は便秘の治療や術前処置など日常診療で広く行われている処置であるが時に重篤な合併症を引き起こす事を認識する必要がある.
学位報告
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