岩手医学雑誌
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生体肝移植レシピエントにおける 術中乳酸値の上昇率は予後予測の指標となりうる
畠山 知規本郷 修平熊谷 基大畑 光彦高原 武志鈴木 健二
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2021 年 73 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

肝移植レシピエント患者の予後予測因子を明らかにする目的で後ろ向きに検討した. 当施設で2012年1月~2017年12月の期間に施行された生体肝移植術のレシピエント患者43名を対象とし,移植後90日での生存群:1群‹n = 34›と死亡群:2群‹n = 9›に振り分けた. 90日生存率は79.1%であった.術前血中尿素窒素濃度‹BUN›およびmodel for end-stage liver disease score‹MELDスコア›は2群で有意に高く,血中Cl−1濃度は2群で有意に低かった.麻酔導入後および手術終了時のBUNは2群で有意に高かった.術中の血中乳酸濃度‹Lac›に群間差はなかったが,移植肝再灌流後から手術終了時のLac上昇率は2群で有意に高かった‹いずれもp < 0.05›.麻酔前因子・麻酔中因子・麻酔後因子に分けて施行したロジスティック回帰分析では麻酔中移植肝再灌流後のLac上昇率のみが有意な影響因子であった‹OR = 6.117,95%CI = 1.002 - 37.351,p = 0.048›. 肝移植における再灌流後のLac上昇率は予後予測の指標となりうることが示唆された.

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