岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
73 巻, 1 号
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Original
  • 畠山 知規, 本郷 修平, 熊谷 基, 大畑 光彦, 高原 武志, 鈴木 健二
    2021 年 73 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/08
    ジャーナル フリー
    肝移植レシピエント患者の予後予測因子を明らかにする目的で後ろ向きに検討した. 当施設で2012年1月~2017年12月の期間に施行された生体肝移植術のレシピエント患者43名を対象とし,移植後90日での生存群:1群‹n = 34›と死亡群:2群‹n = 9›に振り分けた. 90日生存率は79.1%であった.術前血中尿素窒素濃度‹BUN›およびmodel for end-stage liver disease score‹MELDスコア›は2群で有意に高く,血中Cl−1濃度は2群で有意に低かった.麻酔導入後および手術終了時のBUNは2群で有意に高かった.術中の血中乳酸濃度‹Lac›に群間差はなかったが,移植肝再灌流後から手術終了時のLac上昇率は2群で有意に高かった‹いずれもp < 0.05›.麻酔前因子・麻酔中因子・麻酔後因子に分けて施行したロジスティック回帰分析では麻酔中移植肝再灌流後のLac上昇率のみが有意な影響因子であった‹OR = 6.117,95%CI = 1.002 - 37.351,p = 0.048›. 肝移植における再灌流後のLac上昇率は予後予測の指標となりうることが示唆された.
  • 黒川 絵里加, 川村 花恵, 寺田  幸, 羽場  厳, 佐藤 貴紀, 佐々木 由梨, 畑山 伸弥, 岩動 ちず子, 小山 理恵, 馬場  ...
    2021 年 73 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    2001年,岩手医科大学附属病院は, 24時間体制でハイリスク妊娠に対応できる総合周産期母子医療センターを設置した.その役割に産科危機的状況を回避すべく超緊急帝王切開‹通称;Grade A›がある.このGrade A構築に至った要因と過程を報告する.始めに,院内外で発生しGrade A 構築の要因となった症例を分析し,次に,フローチャート作成と多職種間でのシミュレーションについて検討.要因となった症例は23例‹1.27%›であり,その児の転帰は,子宮内胎児死亡が1例,脳性麻痺合併が2例であった.フローチャートは,主に母子集中治療室担当医師が,多施設の資料,医療安全対策推進室からのアドバイス,麻酔科・新生児集中治療室・手術室・看護部・輸血検査部・医療事務などから意見を集約し作成した.シミュレーションを3回施行した結果,到着から児娩出までの時間は6から19分間とばらつきがあった.今後,安定したGrade Aを運用することで,妊産婦死亡・脳性麻痺児ゼロを目指す.
  • 平成25年度(2013年度)~平成30年度(2018年度) の追加集計成績と発足以来の推移
    狩野  敦, 村上 晶彦, 松本 主之, 小川  彰
    2021 年 73 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    1965年度に開始したバリウムを用いる胃X線検査による岩手県対がん協会の胃がん検診(胃集団検診)は2018年度までの53年間に延べ3,923,333名を検診し,5,003名の胃癌患者を検出した.先に検診発足以来,2012年度までの検診の推移を分析報告した.今回,2013年度から2018年度までの6年間の検診成績を追加分析した.さらに検出胃癌の5及び10年実測生存率を調査した.その結果,地域および職域集計で前回5年間の集計に比較し,今回6年間の集計では,平均要精検率は7.3%から5.5%に,平均精検受診率は87.1%から87.7%に,癌発見率は0.15%から0.14%に推移し,最終陽性反応的中度は2.53%であった.また,5年実測生存率は84.4%,10年実測生存率は79.0%であり,有効性の高い胃がん予防方法と考えられた.一方で地域検診にあっては人口減少や受診者が高齢化し,受診率ことに新規受診者の伸び悩み,そして読影医の高齢化などの問題点が指摘され,今後の胃がん検診の在り方を検討すべき段階にきていると考えられた.
  • 平成25年度(2013年度)~平成30年度(2018年度) の追加集計成績と発足以来の概要
    狩野  敦, 村上 晶彦, 松本 主之, 小川  彰
    2021 年 73 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    昭和60年度‹1985年度‹に開始した協会の大腸がん検診は平成30年度‹2018年度‹までの33年間に延べ2,186,055名を検診し,大腸癌4,795名‹発見率0.22%‹を検出した.先に検診発足以来,平成18年度‹2006年度‹までの集計,さらにその後平成24年度‹2012年度‹まで6年間の追加集計で検診方法の推移と検診成績の関係を中心に分析し報告した.今回,その後検査方法が同一であった2018年度までの6年間の検診成績を追加分析した.その結果,地域および職域集計で平均要精検率は前回の5.6%から5.3%に,平均精検受診率は83.0%から84.5%に,発見率は0.24%から0.23%と,ほぼ同率に推移し,最終陽性反応的中度は4.41%であった.近年,大腸がん検診における癌発見率のみならず,発見癌に占める限局癌の比率も高く,発見例の5年実測生存率は90.8%,10年実測生存率は84.4%と良好であることから,現行の検診は大腸がん死亡の予防法として有効性が高いと考えられた.検診の全体を検討した結果,精度管理の重要性が強調された.
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