1986 年 11 巻 3 号 p. 259-269
生検材料ならびに手術材料228症例から得られた耳下腺腺体外リンパ節における唾液腺上皮の出現状況を病理組織学的に検索した。その結果, 唾液腺上皮は22症例(9.7%)のリンパ節に認められ, その出現頻度は耳下腺腺体内リンパ節にくらべはるかに低かった。リンパ節における唾液腺上皮の出現と年齢あるいは性別との間には一定の傾向は見い出せなかった。また, 解剖学的部位別に比較すると耳下腺近傍に位置するリンパ節ほど唾液腺上皮の出現頻度が高かった。リンパ節内にみられた唾液腺上皮の大部分は小導管上皮と耳下腺腺房と同様の所見を呈する漿液性腺上皮であったが, 一部には粘液性の腺上皮が混在してみられた。また, リンパ節内唾液腺上皮の一部には扁平上皮化生やオンコサイト化とそれらの過形成, 小嚢胞の形成などをみたが, この様な所見を呈したものの多くは高齢者例であった。 唾液腺の腺リンパ腫や良性リンパ上皮性病変などの組織由来をリンパ節内唾液腺上皮に積極的に求め得る所見はなかった。