1989 年 14 巻 1 号 p. 60-64
14歳女性の上顎洞部に発生した病変が, オルソパントモX線写真では含歯性嚢胞が疑われたので, 生検を兼ねた開窓療法を行った。その後, 嚢胞は縮小したが, 埋伏歯の移動が少ないため, 初診時の後頭前頭X線造影写真を再検討したところ, 同歯は嚢胞の上外側壁に接するように存在していた。本例は摘出物の肉眼的および病理学的所見から,
埋伏歯が原始性嚢胞によって上顎洞の上外方に圧排されたものと考えられた。上顎洞部に発生する原始性嚢胞と含歯生嚢胞は, 臨床的には類似した所見を呈することがあるが, その際には多方向からの造影X線写真が鑑別診断に有用である。