1989 年 14 巻 2 号 p. 117-123
臨床上, 容易に利用可能な顎骨の骨梁密度の定性的判定法を探るため, 成人ヒト乾燥下顎骨の薄切標本とそのX線像を比較検討した。
1)下顎骨21体のX線写真から, 骨梁の疎なもの, 中等度のもの, 緻密なものに分類し, その中から特徴的なもの各1例を選択し, 基準標本とした。
2)それぞれのX線写真をmicrodensitometerで走査したところ, 骨梁相当部は黒化度曲線のピークとして認められ, 単位長さあたりのピーク数は緻密なものになるにしたがい増大した。
3)基準となる下顎骨の骨体部横断面薄切標本から, 骨梁面積と骨髄腔面積の比率(骨梁比=骨梁面積/骨髄腔面積)を求めた。その結果, 骨梁密度の疎な標本, 中等度の標本, 緻密な標本の比はそれぞれ0.240, 0.499, 0.492となり, 中等度と緻密との間の標本の差は認められなかった。また, 骨梁密度は下顎骨体部の厚径が大きいものほど高くなるため, 厚径の大きい下顎骨では骨梁比が等しい場合でもX線写真上では緻密と判定されることが示唆された。
以上のことから, 顎骨の厚径を考慮すれば, 骨梁密度をデンタル型X線写真上で定性的に評価することは, 骨梁の緻密性を推測する有効な手段になると考える。