岩手医科大学歯学雑誌
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症例報告
鼻歯槽嚢胞の1例
越前 和俊大淵 義孝小島 誠水野 明夫関山 三郎野田 三重子佐藤 良三
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1977 年 2 巻 3 号 p. 152-159

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抄録

今回われわれは, 左側鼻前庭部に腫脹をきたしたものに摘出手術を施行し, 鼻歯槽嚢胞と診断された1症例を経験したので報告する。

症例は47歳女性で, 約5~6年前左側鼻翼下部に圧痛を伴う腫脹が出現し, 某耳鼻科にて黄色粘稠性内容液の吸引を受け症状は消退したが, 約1年前より同様の症状が発現したため, 同耳鼻科より紹介された。局所々見としては, 左側鼻前庭外側より底部にかけ, 後方は下鼻道に至る, いわゆるGerber隆起が認められた。口腔内所見では相当歯肉唇移行部より鼻翼直下にかけ小指頭大, 半球状の暗赤色を呈する腫瘤が認められ, 約1mlの半透明な粘稠性内容液が吸引された。X線造影写真では梨状口左側下縁部上前方に16×15×11mmのひょうたん形の境界明瞭な造影像がみられ, 歯牙との関連はなく, 軟組織内に生じた嚢胞性疾患と考えられた。治療は2%リドカイン浸潤麻酔下に口腔内より嚢胞摘出術を行い経過良好である。病理組織像では, 嚢胞壁内面は呼吸上皮や重層扁平上皮により被覆されていた。上皮下は大部分粗な結合組織で形成され, 一部には密な膠原線維および 硝子化がみられた。臨床所見をも合わせ, 鼻歯槽嚢胞と診断された。

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1977 岩手医科大学歯学会
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