2018 年 12 巻 p. 27-35
関東地方にはかつて利根川の氾濫原を中心に多くの河川・池沼が点在し,カラスガイ,イシガイ,ドブガイ類が生息していた.しかし近年,特にカラスガイの生息数の減少が顕著であり,各県のレッドリストにおいて,絶滅危惧種に指定されており,地域個体群の絶滅が危惧されている.2017 年3 月11 日に,渡良瀬遊水地内の水路においてカラスガイを採集した.カラスガイの殻長は180–300mm の範囲であり,同所的に生息するドブガイ類と異なり小型個体は見られなかった.カラスガイは新規加入がほとんどなく老齢個体だけが生き残っている状態と思われる.本種の分布や生息地に関する報告が非常に少ない現在,既報に記載された生息地の再確認を行うとともに,関東地方には過去に琵琶湖産二枚貝類の移植に伴ってカラスガイが持ち込まれた可能性もあるため,自然分布域の遺伝子を分析して地域ごとの遺伝子型を調べておくことが急がれる.