琵琶湖の内湖における生物多様性減少機構を明らかするため,魚類相の定量調査を堅田内湖で実施した.標本は2001年8月から2006年7月の5ヵ年にわたり投網で集めた.1年目と2年目ではフナ属魚類,モツゴ,タイリクバラタナゴの3種が優占種であった.5年の調査期間中,この3種が全体に占める個体数の割合は83.3%,84.3%,68.9%,18.6%,および15.5%と激減し,一方で侵略的外来種のブルーギルとオオクチバスの個体数の割合が3.9%,4.5%,16.2%,68.9%,および78.1%と急増した.この優占種の置き換わりにより,市場価格を参考にした生産高変化法によって算出された経済損失額も調査期間中に増加した.これらの結果は,優占種の減少がブルーギルとオオクチバスの増加と同調して起こることと,優占種の減少が潜在的経済損失をもたらすことを示している.生物多様性の回復のためにこれらの2種の侵略的外来種を除去する必要性とその方法についてもあわせて議論した.