抄録
負債の概念規定における「債務性」要素の意義や役割を,歴史的な文献を紐解きながら,主として収益費用アプローチ(損益計算重視)の時代と資産負債アプローチの時代に分けて検討したうえで,今後の企業会計において,負債概念における「債務性」要素がいかなる役割を果たしていくべきであるのかを考察することを目的としている。負債概念において,「債務」の範囲が法的債務に限定されてくると,「債務性」要素は、負債の認識規準(負債と資本の区分規準)としてはその役割が縮小されることになる。しかし、今後は概念的に首尾一貫した収益認識規準の一部を構成することによって,利益の性質を画一化するという役割を果たすことになってゆくものと考えられる。