会計プログレス
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為替換算調整勘定の性格付け
包括利益概念に関連付けて
松原 沙織
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2007 年 2007 巻 8 号 p. 106-120

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抄録
 本稿は,為替換算調整勘定の性格付けを行い,その変動額を包括利益の1構成要素として考慮する意味を検討している。特定の利益概念を前提とせずに資本修正説,評価勘定説および繰延勘定説の視点より考察した結果,名目資本維持概念を前提とする限り,評価勘定説および繰延勘定説による性格付けが可能と考えられた。これを踏まえ,資産および負債の定義に依拠する包括利益概念を前提に,評価勘定説および繰延勘定説の視点より検討するならば,為替換算調整勘定は,将来の収益あるいは費用として,それ自身独立した意味を有する繰延勘定説に基づき性格付けが行われることとなる。加えて,為替換算調整勘定が,貸借対照表の資産および負債に含まれない論拠を,類似した性格を有する他の項目との性格の相違に着目し確認した。かかる検討を通じ,為替換算調整勘定が,将来の収益あるいは費用という性格に着目し,将来の収支を見越す項目であることから,貸借対照表の資産あるいは負債としてではなく,純資産の一部とされ,その変動額が包括利益計算へ含められる理論的背景を明確にした。
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© 2007 日本会計研究学会
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