会計プログレス
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2007 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 池田 公司
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 1-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     2001年,ニューヨーク大学ビジネススクール(Stern School of Business, New York University)のBaruch Lev 教授は,Intangibles : Management, Measurement, and Reportingと題する研究報告書を公表した。Lev教授は,伝統的な会計システムの限界を指摘し,現代企業の無形資産(ヨーロピアンスタイルの用語法によると「知的資本」,すなわちIC)に着目した包括的な情報システムを提案した。今日の知識集約型のニューエコノミー,とりわけ,ハイテク成長産業や他のナレッジ型産業においては,伝統的な会計システムはもはや十分ではない。こうした観点から,本論文では,拡張された事業報告(EBR),すなわち,企業の知的資産―ブランド,知的財産権,技術革新能力,人的資源,組織資源等―を統合できるように拡張された会計システムのためのXBRLソルーションについて検討する。加えて,本論文では,EBRに対する新しいIT監査のアプローチについて考察する。
  • 池田 幸典
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 23-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,負債・持分の定義,および定義の解釈および適用方法のあり方について検討し,それらの検討を踏まえ,定義の組み合わせに基づく「負債・持分の区分」のあり方について検討する。負債は「将来資産を引渡したり,用役を提供したりする義務」と定義されることが多い。しかし,そこでは定義の解釈および適用の問題があり,負債の定義における義務概念について再検討が必要になるものと考えられる。また,持分は「残余」であると同時に「所有者の権益」であると定義されることが多いが,この場合にも,定義の解釈および適用の問題がある。
     さらに,負債と持分を定義した上で,残高試算表における負債・持分・収益の区分を考えなければならない。しかし,負債と持分の定義が示す範囲に重複があると第三区分が生じ,負債と持分とともに収益まで積極的に定義すると必然的に第四区分が生じる。そのため,負債および持分の定義を,負債・持分・収益の区分に用いることになる。
  • X工場品質コストデータに基づく分析
    梶原 武久
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 35-48
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本論文では,東証1部上場の電気機器メーカーA社の主力工場(X工場と呼ぶ)において収集された品質コストデータに基づいて実施した品質コスト・ビヘイビア分析の結果を提示した上で,日本企業の品質管理のもとでの品質コスト・ビヘイビアについて検討を加える。分析の結果,分析期間とした1992年度から1999年度のうち,1992年度から1994年度までは,予防コストおよび評価コストと失敗コストを同時に改善することが可能であるとするTQMモデルがある程度妥当しているが,それ以降の期間においては,古典的モデルで想定されているトレード・オフ関係,もしくはいずれの品質コストも増加するという関係がみられることが明らかになった。
  • 片岡 洋人
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 49-62
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     自律的組織のような現代的な企業組織では,組織構成員各員が自ら考え,行動・作業する様子を観察することができる。また,トップ・マネジメントから現場作業員に至るまでの各階層における人々が様々な種類の意思決定を行っている。これは,現代の企業組織における意思決定の範囲・概念が拡大したのと同時に,意思決定をする人々の範囲が拡大したことを意味している。このような意思決定環境の変化に伴い,原価計算の役割期待も変化する必要がある。本稿では,自律的組織における様々な意思決定を支援するべく原価計算に求められる役割期待の変化(プロセスの可視化,活動別増分原価情報の提供,およびミクロ・マクロ・ループの形成)について述べている。
  • サティヤム・コンピュータ・サービス社の事例を中心として
    島永 和幸
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 63-75
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,人的資本の価値情報が提供されているインドのIT企業のケースを用いて,人的資本の資産性および人的資本会計の展開可能性について明らかにすることにある。具体的に,以下の3点が明らかにされている。第1に,資源ベース観の下で,人的資本の持続的競争優位について検討し,現在のインドIT産業において人的資本が持続的競争優位の源泉をなしていることが明らかにされている。第2に,人的資本の資産性と公正価値測定の展開可能性について議論し,人的資本には資産性があり,公正価値測定が可能であることが明らかにされている。第3に,インドのIT企業のケースを分析することで,人的資本がアニュアル・レポートで実際に評価・開示されており,ブランド価値とともにオンバランス化が指向されていることが発見されている。
  • 損失回避,減益回避および経営者予想値達成の利益調整を対象として
    首藤 昭信
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 76-92
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,経営者による減益および損失回避もしくは利益予想値を達成するといった,特定の利益水準を目標値とした利益調整の動機を解明することである。経営者が利益調整を行う動機として①契約関係と②証券市場という2つの企業環境に注目して仮説検証を行った。契約に関係する利益調整インセンティブ(経営者報酬,経営者交代,財務制限条項の設定)は,主に損失回避の利益調整の動機となっていることが明らかとなった。また減益回避および経営者予想値達成の動機としては,証券市場に関連する要因(エクイティ・インセンティブ,利益の株式価値関連性,成長性,直接金融の実施)の影響が大きいことが分かった。
  • 矢澤 憲一
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 93-105
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,監査証明業務と一定の非監査証明業務の同時提供禁止後の日本市場のデータを用いて,両者の知識スピルオーバーを検証することにある。分析の結果,非監査業務の有無,金額の大きさ,業務提供期間と監査報酬の間に有意な正の相関があることが発見された。この結果は企業規模,監査人の属性,非監査業務の内容,財務状況,産業特性による違いに対してもロバストであった。
  • 包括利益概念に関連付けて
    松原 沙織
    2007 年 2007 巻 8 号 p. 106-120
    発行日: 2007年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,為替換算調整勘定の性格付けを行い,その変動額を包括利益の1構成要素として考慮する意味を検討している。特定の利益概念を前提とせずに資本修正説,評価勘定説および繰延勘定説の視点より考察した結果,名目資本維持概念を前提とする限り,評価勘定説および繰延勘定説による性格付けが可能と考えられた。これを踏まえ,資産および負債の定義に依拠する包括利益概念を前提に,評価勘定説および繰延勘定説の視点より検討するならば,為替換算調整勘定は,将来の収益あるいは費用として,それ自身独立した意味を有する繰延勘定説に基づき性格付けが行われることとなる。加えて,為替換算調整勘定が,貸借対照表の資産および負債に含まれない論拠を,類似した性格を有する他の項目との性格の相違に着目し確認した。かかる検討を通じ,為替換算調整勘定が,将来の収益あるいは費用という性格に着目し,将来の収支を見越す項目であることから,貸借対照表の資産あるいは負債としてではなく,純資産の一部とされ,その変動額が包括利益計算へ含められる理論的背景を明確にした。
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