抄録
本稿は,コーポレート・ガバナンス、監査報酬と利益管理の関連性を検証している。分析の結果は次のとおりである。第一に,ガバナンスの独立性と監査報酬は正の関連性がある。第二に,リスクとガバナンスの交差項は監査報酬と有意な相関を示さなかった。第三に,投資家から経営者への圧力が強いと考えられる企業ほど,ガバナンスの独立性と監査報酬が高い傾向がある。第四に,ガバナンスの独立性と監査報酬は,目標利益達成行動と有意な負の相関が発見された。第五に,ガバナンスの独立性と監査報酬がともに高い場合に目標利益達成行動との負の関連性はみられなかった。追加分析からは,第一に,ガバナンスの独立性の水準と監査報酬が正の関連性があること,第二に,所有構造の違いはガバナンス構造および監査報酬と関連性があることを示唆させる証拠が発見された。以上の結果は,わが国でも外国人投資家や機関投資家を背景としてガバナンスの独立性が強化されているとともに,独立性の高いガバナンスはそのツールとして会計士監査を用いていることを示唆させる。