抄録
金融投資におけるレベル3 公正価値測定において,最低限の信頼水準を満たさない領域に関し,会計情報の質的特性の観点から概念的掘り下げを行う。そこでは,近年における概念フレームワーク見直しの議論を踏まえつつ,測定の重要な不確実性によって「忠実な表現」が充足されない状況について,「検証可能性」概念区分の再構築(「合理的検証可能性」区分の識別)を通した基礎付けを行うとともに,IASBの「直接的」「間接的」という2 分法では「検証可能性」概念が的確に捉えられていない問題点を指摘する。こうした考察を踏まえ,「一致的検証可能性」と併せて「合理的検証可能性」が,「忠実な表現」の構成要素足り得ることにも論及する。