日本救急医学会関東地方会雑誌
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Print ISSN : 0287-301X
症例報告
ダビガトラン内服下の肺胞出血に対してイダルシズマブを使用した1例
小口 萌湯澤 紘子木村 友則森戸 知宏水嶋 翔平貞廣 智仁
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2018 年 39 巻 2 号 p. 299-302

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抄録

症例は心房細動に対しダビガトランを内服中の54歳男性。来院時, 喀血があり頻呼吸と酸素化能の低下を認めた。血液検査で貧血, 代謝性アシドーシス, 腎機能障害, 凝固障害があり, 胸部CT検査では両肺野に浸潤影やすりガラス影を認めた。airway pressure release ventilation (APRV) モードでの人工呼吸管理を開始したが喀血の制御が困難であり, 輸血に加えてイダルシズマブを投与した。投与後に喀血が減少し, その後凝固機能検査の値は正常化した。全身管理を行いながらステロイドパルス療法や血漿交換を施行し第50病日に自宅退院した。各種検査から顕微鏡的多発血管炎による肺胞出血の診断となった。本症例ではダビガトランの内服により出血傾向をきたしており出血のコントロールに難渋したが, イダルシズマブが止血に効果を発揮したと考えられ, 救命することができた。抗凝固薬内服中の出血性合併症に対応するために各抗凝固薬に対しての特異的拮抗薬の開発が望まれる。

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