日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要
Online ISSN : 2432-4094
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近年の発達保障理念をめぐる争点と課題
人格発達の権利に焦点を当てて
佐藤 健吾
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2022 年 38 巻 p. 47-61

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抄録

 発達保障論の評価には、「どんなに重い障害があったとしても、普通児と同じ発達の道を通る」という部分に関わって、実際には重い障害を持つ人の個人的な能力の発達を強いるのではないかということを問題にする従来の評価と、それとは逆に、人として同じように個人的な能力を用いることにおいて平等性を捉えることが、今日的な自立支援の理念と重なるのではないかという近年の評価がある。本稿は、この対立的見解を「争点」とし、発達を保障するべき権利が、どのようにあるべきなのかということを課題としている。発達保障論が、はたしてどのような理念をもって権利の保障を捉えていたのか。その理念を、糸賀一雄の「人格発達の権利」に求め比較検討した。検討の結果、個人的能力を用いる発達観では、権利とはなり得ないこと。「発達的共感」という実践理念を基盤とする「人格発達の権利」が、従来の社会権の概念に新たな視角を与えるものであることが解った。

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© 2022 日本福祉教育・ボランティア学習学会
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