2022 年 39 巻 p. 11-25
本論文は、福祉教育・ボランティア学習実践が目指すべき「共生」を「交流・創成型多文化共生」と捉えた。また、この共生を実現するためには、福祉教育・ボランティア学習の実践的エートスであるボランタリズム概念に、「越境性のボランタリズム」という概念を加えるべきであることを提示した。「交流・創成型多文化共生」は、異文化の並存ではなく、活発に交流することを志向し、「差異を梃子にした学び」によって異文化を相互理解しつつ、共に新しい文化を創出することを意図した共生概念である。これを実現するためには、福祉教育・ボランティア学習実践が陥りがちなパターナリスティックな支援観を排し、差異ある他者への関心に基づい「たケアリング」を位置づけることが重要である。その観点から、拙論であるケアリングコミュニティの理論を用いて、差異ある人同士が関わりながら互いの「意味」を創出する、「意味ある共生」のあり方を検討した。