日本福祉教育・ボランティア学習学会研究紀要
Online ISSN : 2432-4094
Print ISSN : 2432-4086
39 巻
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  • 大石 剛史
    2022 年 39 巻 p. 6-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
  • 交流・創成型多文化共生概念、越境性のボランタリズム、ケアリングコミュニティの理論を用いて
    大石 剛史
    2022 年 39 巻 p. 11-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     本論文は、福祉教育・ボランティア学習実践が目指すべき「共生」を「交流・創成型多文化共生」と捉えた。また、この共生を実現するためには、福祉教育・ボランティア学習の実践的エートスであるボランタリズム概念に、「越境性のボランタリズム」という概念を加えるべきであることを提示した。「交流・創成型多文化共生」は、異文化の並存ではなく、活発に交流することを志向し、「差異を梃子にした学び」によって異文化を相互理解しつつ、共に新しい文化を創出することを意図した共生概念である。これを実現するためには、福祉教育・ボランティア学習実践が陥りがちなパターナリスティックな支援観を排し、差異ある他者への関心に基づい「たケアリング」を位置づけることが重要である。その観点から、拙論であるケアリングコミュニティの理論を用いて、差異ある人同士が関わりながら互いの「意味」を創出する、「意味ある共生」のあり方を検討した。
  • 教育・労働の視点から
    朝倉 美江
    2022 年 39 巻 p. 26-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     「外国人」と称されている移民が抱えるもっとも深刻な課題は市民権が保障されていないことである。したがってその市民権を保障していくためには多文化主義という思想とそれに基づく統合的な多文化共生政策が重要である。本論では、多文化主義の歴史と多文化共生政策について先行研究を踏まえ論じた。その上で日本には包括的な移民政策がないことと、現在の入管政策では経済的な側面に焦点があたっていることを指摘した。そして現在も増加している「外国人労働者」の劣悪な雇用環境による「不安定定住」の実態と課題を明らかにした。今後、多文化共生を推進していくためには、学校教育と社会教育がともに多文化主義という理念をもった「福祉教育」として発展することが求められる。そしてその「福祉教育」は、今までの教育や労働の在り方自体を問い直すものであることを非営利・協同組織の実践から検討した。
  • 「非権力性」「主体性」に着目したvoluntaryism
    松山 毅
    2022 年 39 巻 p. 41-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     多文化共生社会とは、異なる文化や価値観を持つもの同士が、違いを認め合いながら共に暮らしていくことである。本研究では、ボランタリズムの歴史的思想的背景を再検証することを通して、多文化共生社会の課題(違いを認め合うにはどうすれば良いか、共に関わり合うことは可能か)について考察することを目的とした。従来のボランタリズム研究ではあまり重視されてこなかった、「非権力性」「主体性」の側面について、ヨーロッパのボランタリズムの思想的背景を紐解きながら確認した。「自分の権利や自由を大事にすることと同じように、相手の権利や自由を尊重する」という、相互の主体性を尊重する姿勢が「違いを認め合う」上での出発点になること、既存の価値観や権力構造とは離れた立場で関わる「非権力性」の視点が、両者をつなぐ媒介機能を果たす可能性が在ることを指摘した。また、多文化共生を推進する方法論としての福祉教育・ボランティア学習実践についても、ボランタリズムの観点から、福祉教育・ボランティア学習の価値について再検討する必要性について検討した。
  • 〈当事者性の邂逅〉に着目して
    後藤 聡美
    2022 年 39 巻 p. 53-66
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
    本稿は、多文化共生社会の創成に求められる交流実践の意義および実践上の観点を、福祉教育・ボランティア学習研究において深化されてきた当事者性概念を用いて論じたものである。多文化共生の実相化には、政策的なアプローチだけでなく、具体的な人・コミュニティの接触場面から生まれる学びを重視する学習論的アプローチが不可欠である。本稿では、異なる価値観を有する者の交流の中で生じる緊張・警戒状態あるいは管理・依存状態が一時的に解かれるコンヴィヴィアルな空間に注目する。そこでは、交流参加者の複数の当事者性の各要素が触れ合う〈当事者性の邂逅〉が生まれており、 それが多文化交流実践において意外性を伴う出会いを誘発する役割を果たすことを明らかにした。参与観察およびインタビューから〈当事者性の邂逅〉の内実を整理し、多文化共生の創成に資する実践の観点を提示した。
  • 「多文化」共生の実質化を目指して
    小林 洋司
    2022 年 39 巻 p. 67-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     本論文の目的は、「多文化」共生を実質化しようとする際にあらわれる課題を提起するとともに、その課題に対して福祉教育・ボランティア学習研究 / 実践が果たす役割について「対峙」という概念を手がかりにしながら明らかにすることである。  本論文では、福祉教育・ボランティア学習において、学習者が理解を深めていくプロセスや、実践者がプログラムを計画する際に「学習者の対峙」をどのように創生するかが重要であることが明らかになった。対峙という概念を提起し conflict を検討することによって、福祉教育・ボランティア学習が、異質性を前にそのちがいやわからなさを前面に押し出し、相容れないことを即座に決定するのではなく、異質性やわからなさに答えを出そうとする自分を探し、みつける、すなわち「自分の思考について思考する」ことを可能にする契機であること、そしてそのなかで conflict を捉え直す重要性が明らかになった。
  • 多文化共生を促進させる福祉教育・ボランティア学習の発展を目指して
    高杉 公人
    2022 年 39 巻 p. 82-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では、在留中国人高齢者の介護通訳を務める 5 人に対して自身の「主体性」及び「文化媒介力」に関する個別インタビューを実施した。データは、定性的コーディングによって整理した。   結果、「主体性」に関して、44のコード、20のサブカテゴリー、 7 のカテゴリーが抽出された。一方、「文化媒介力」に関して40のコード、16のサブカテゴリー、 7 のカテゴリーが抽出された。  介護通訳者の主体性に関して、中国人高齢者の現状に対する危機意識が【介護通訳に意欲を持つ】ことにつながることが判明した。更に、一般的な通訳よりも利用者との【信頼関係の構築を目指す】ことを重視しており、そのため【意訳を行う】ことが多いことが判明した。また、文化媒介力に関しては【介護に対する考え方の違いによる調整を行う】、【自立支援に対する考え方の違いを調整する】、【習慣の違いによる調整を行う】といった調整力を発揮していることも判明した。
  • 親密圏と公共圏を紡ぎ地域で支え合いを可能とする空間づくり
    佐藤 陽
    2022 年 39 巻 p. 97-112
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     地域共生社会の実現に向けて、多文化共生とボランタリズムを紡ぎ、多様な立場の一人一人が、地域を構成する一員として自律した市民社会を築くためには、人が道具のように扱われることなく、人間として、よりよく生きることをめざせるよう、互いの存在の違いを認め合い、異質性を排除せず、主体的に対等に共に生きていく姿勢を学びと実践の中で育み、そこに存在し続けられるようにする。市民自らの意志でこうした地域づくりに参加することが共生の文化を創る自治となり、それが地域における社会福祉(well-being)として多様性を重視しながら取り組むことにつながる。こうした理念を具現化する方法として、地域の多様な主体との協働を可能とするプラットフォームが考えられる。そこで、地域を基盤とする福祉教育推進プラットフォームとして地域で実践した事例から形成過程を詳細に分析し、ボランティア学習も含め、学習と実践を往還させ、さまざまな立場の人や社会資源の交流を生成する基盤となり、公共空間(公共圏)として機能し、その場で関わった人同士が新たな「親密圏」を生みだし、更なる「公共圏」の生成にもつながる共生の機会を創出し得ることを障害者と「福進協(事例のプラットフォーム)」の関わりから、多文化共生とボランタリズムを実質化する実践方法の 1 つとして検討した。
  • まなびほぐしのプロセスに注目して
    堤 拓也
    2022 年 39 巻 p. 114-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     本稿は、複数回のワークキャンプにおいて異なる役割を経験してきた参加者の〈ゆらぎ〉の分析を通して、その〈ゆらぎ〉の意義を明らかにしようとするものである。参与観察およびインタビュー調査の結果、以下の実践上の仮説が得られた。①複数回参加者の〈ゆらぎ〉を意味づける〈まなびほぐし〉の機会は、当該ワークキャンプの最中あるいは事後直近のプログラムではなく、一定の期間を空けて、その役割から解放された状況下において生まれるのではないか。②その具体的な方法として、異なる役割を経験してきた参加者同士による相互のインタビューやワークショップが有効なのではないか。③異なるフィールドのワークキャンプに異なる役割を持って参加することも〈まなびほぐし〉を生み出していく上で重要な意義を持つのではないか。今後、複数のワークキャンプ経験を包摂した広い枠組みの中で、より多角的に参加者の主体形成過程を解明することが求められる。
  • 筑波学院大学オフ・キャンパス・プログラム15年アンケート結果を事例 として
    武田 直樹
    2022 年 39 巻 p. 129-140
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     日本の大学教育でサービス・ラーニング(Service-Learning:以下、SL)という教育手法が使われるようになってきたのは、ごく最近の2000年代以降の事である。これまでこの SL による影響は、学生の成長を評価する事に主眼を置かれがちであったが、本稿では、学生を受入てくれた地域の受入団体への影響に着目する。特に筆者がほぼ開始当初から14年間に亘り関わってきた筑波学院大学15年アンケートでの受入団体からの回答結果から浮き彫りになった現状と課題を整理する。この事で、受入側の視点から日本の大学教育で SL を更に推進していくための考察を行う事が本稿の目的である。
  • 日本における高齢者向け生活支援サービス提供活動に焦点を当てて
    齊藤 紀子
    2022 年 39 巻 p. 141-154
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー
     日本では少子高齢化の進展に伴い高齢者分野において、家事支援などの生活上のニーズに市民が助け合い活動として取り組むうちに、1980年代に謝礼金という金銭を受け取る「有償ボランティア」がうまれた。いまではまちづくり、子育て支援、教育、環境などさまざまな分野でも展開されているが、その位置づけについてのコンセンサスは得られていない。本稿では先行研究に基づき、課題として無償性と有償性の概念的コンフリクト、有償ボランティアの労働者性、会計的な持続可能性確保の難しさ、国家による保障の引き下げの 4 点を示し、可能性として利用者と支援者の対等性確保、活動参加およ び継続の促進、利用者および支援者の多様性確保の 3 点を示している。そして有償ボランティアの位置づけの明確化および可能性の最大化のための試論として、有償ボランティアとして実施する生活支援サービス項目の特定と、インパクト評価に基づく認証制度の創設を提示している。
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