「外国人」と称されている移民が抱えるもっとも深刻な課題は市民権が保障されていないことである。したがってその市民権を保障していくためには多文化主義という思想とそれに基づく統合的な多文化共生政策が重要である。本論では、多文化主義の歴史と多文化共生政策について先行研究を踏まえ論じた。その上で日本には包括的な移民政策がないことと、現在の入管政策では経済的な側面に焦点があたっていることを指摘した。そして現在も増加している「外国人労働者」の劣悪な雇用環境による「不安定定住」の実態と課題を明らかにした。今後、多文化共生を推進していくためには、学校教育と社会教育がともに多文化主義という理念をもった「福祉教育」として発展することが求められる。そしてその「福祉教育」は、今までの教育や労働の在り方自体を問い直すものであることを非営利・協同組織の実践から検討した。