本論文の目的は、「多文化」共生を実質化しようとする際にあらわれる課題を提起するとともに、その課題に対して福祉教育・ボランティア学習研究 / 実践が果たす役割について「対峙」という概念を手がかりにしながら明らかにすることである。 本論文では、福祉教育・ボランティア学習において、学習者が理解を深めていくプロセスや、実践者がプログラムを計画する際に「学習者の対峙」をどのように創生するかが重要であることが明らかになった。対峙という概念を提起し conflict を検討することによって、福祉教育・ボランティア学習が、異質性を前にそのちがいやわからなさを前面に押し出し、相容れないことを即座に決定するのではなく、異質性やわからなさに答えを出そうとする自分を探し、みつける、すなわち「自分の思考について思考する」ことを可能にする契機であること、そしてそのなかで conflict を捉え直す重要性が明らかになった。