抄録
本研究では東日本大震災を事例にしてボランティアを受け止める人々や地域からみた災害ボラン ティア経験について、特にどのような困難や葛藤に直面したか、ボランティアとの関わりは地域の形 成にどのように影響を与えたか明らかにしていくことを目的とした。研究の方法として、東日本大震 災で被災した岩手県大槌町の子ども支援の関係者への質的調査を進めた。調査とその分析から被災後 の地域は孤立しているため、非対称な関係を一方的に持ち込み、ボランティアが傷つけるような行為 によって「ボランティアに対する負の感情」が生まれること、それは二次被害のような状況にもなり かねないことが明らかになった。 ボランティアとそれを受けとめる地域機関、人々による継続的な省察によって、活動をともに創り上げる「共同作業としての参加」となり、地域とボランティアの相互的な変容が生まれていることも 確認された。省察的な地域への関わりや協働的な場の形成には福祉教育・ボランティア学習における重要な核が存在していたといえるのではないか。